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color is ...
土曜日、学校はお昼まで。
あたしは最近見つけた美味しいベーカリーへ向かった。

でもふと、入る道を間違えてしまったことに気づいた。

「は、はれ……ここ…どこ??」

静かで細い通り、なんとなくレトロな雰囲気。
どこかいつも通っている道とは違う不思議な感覚が新鮮で
あたしは元の道へ戻るのをやめて、そのまま進むことにした。

「はわっ!」

突然飛び出してきた黒猫はびっくりするくらい綺麗な目をしてた。
撫でようと手を伸ばすと、するりと抜けて
軽やかな足取りで歩き出した。

「あ、にゃんこさん待ってっ。」

追いかけてあたしも一緒に走った。
猫は一軒の店の軒先で足を止めると、にゃーんと一鳴きして
その店の中に入っていってしまった。

「あーあ…。」

しょんぼりしつつ、ふとショーウインドウを見る。
そこにあったのは可愛らしいアンティーク小物の数々。
オルゴール、ぬいぐるみ、ガラスの置物…。
その中でひときわ目を引いたのは、小さな油絵。

そこにはしなやかな猫が一匹、描かれていた。
それはそれは綺麗な、藍色の猫が、こっちを見ていた。

「……にゃんこさん……槙くんの、色……。」
「マキくんって誰?」
「はわっ?!」

突然後ろから声をかけられて、思わず心臓がはねた。

「智くんっ?! なななんでこんなとこにいるんだべさ!」
「ん?おねーちゃんがこの道にフラフラ入っていく後姿みつけて
 心配で追っかけてきたんだよ。」
「そっか、あは…ははは。」
「で、マキくんって?」
「と、友達に決まってるしょやっ!」
「ふーーーん。」


その後、二人でお昼ご飯いっしょに食べようってことになった。
あたしは最後に、そっとショーウインドウをもう一度覗く。
藍の猫は変わらず静かに、そこに佇んでいた。

『ばいばい、またね』って心の中で話しかけたとき
鳴き声が聞こえたけど、それはきっと、さっきのあの黒猫だよね。
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テーマ:Silver Rain - ジャンル:オンラインゲーム

【2007/04/09 23:27 】
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ひみつ
晩御飯の後、いつものように洗い物をしてたあたしに
おとーさんは話があるから座れといった。

「洗い物すましてからじゃだめかい?」
「あとにしなや。」
「う…うん。」

ただならぬ気迫に押されて、あたしはおとーさんの向かいに座った。

「どうかしたんかい?」
「お前、最近ちょこちょこ怪我して帰ってきてるしょや。」
「あ、あぅ…それは…転んだりよくするから。」
「そんな嘘、いつまで通用すると思ってんだべさ。」

ずっと秘密にしてきた。
銀誓館学園が’そういう’学校だってこと。
あたしが能力者だってこと。
戦争に、あたしが参加してるってこと…。

「…あぅ。」
「あぅじゃわからん、ちゃんと話せ里栖。」

おとーさんの目がいつもと違う、厳しい目。
お仕事してるときみたいな目、少し怖い。
だけどもう…隠し通せないみたい。

あたしは全部、話した。




「……なんでそんな大事なこと今まで秘密にしてた。」
「し、心配させたく…なかったから。」
「……。」

おとーさんは腕を組んで厳しい顔をしたまま黙ってしまった。
沈黙が重いよ。

「わかった。」
「おとーさん…!」
「転校すんべ。」
「…へ?!な、なんでっ!」
「あほ、そんな危ねートコに大事な一人娘預けられるか!!」
「あ、あ、あぅ、でも、でもっ!」
「でももクソもねぇ!!」
「おっじゃまー、って…うわ、喧嘩中?
 オヤジさんが里栖に怒鳴るなんて珍しいなー。」
「あぅ~虎ちゃん~。」

ちょうどいい所で、虎ちゃんがやってきてくれた。
怒ったおとーさんは死ぬほど怖いんだもん。
あたしでも手がつけられない。

「虎!おめー知ってたんか?!里栖が能力者とやらだってこと!」
「ぅえ? お、おぅ。」
「てめぇ、バッカ野郎!!」
「ぶはっ!!」

おとーさんの容赦ない鉄拳が虎ちゃんの頭にヒット。
虎ちゃんは頭を抱えてジタバタしていた。

「な、なにするんだべさ、おとーさん!」
「知ってて里栖が戦場に行くの見守ってたんかい!」
「見守ってねぇし!俺ちゃんと守りに行ったし!!」
「…へ?」
「おとーさん……虎ちゃんも能力者なんだわ…。」
「お、おめーも?!」

殴られた頭をなでつつ「へへ」と虎ちゃんは笑う。

「なんなんだべさ…。」
「おとーさん…あたし、ひとりぽっちじゃないから…。
 戦うのは嫌だし怖いけど…おとーさんやみんなを、守りたいから…。」
「なんで…なんで里栖が戦わなきゃなんねーんだ…。
 俺の目の届かない所で……生死かけて。」
「…ごめんなさい。」

頭を抱えてうずくまったおとーさんの肩が震えている。
あたしは、はじめておとーさんが泣いてるのを…見た。
背が高くて、男らしくて、いつだって強気なおとーさんが
今はこんなに……。

辛いよ、悲しいよ、ごめん、ごめんなさい。

涙があふれてきた。
声が出なくて、ただ必死で、おとーさんを抱きしめた。
そんなあたしの頭を、虎ちゃんがあったかい手で撫でてくれた。

「…虎。」
「あいよ。」
「………里栖を守ってやってくれ…頼む。」
「わーってるって、元から全身全霊かけて守るつもりだったよ。
 だから、俺に頼み事なんてオヤジさんらしくねーことやめよーぜ?」
「虎ちゃん…。」
「…死ぬなよ、絶対、二人とも。」
「うん。」
「イエッサー!」


あたしが死んだら、きっとおとーさんは壊れちゃう。
虎ちゃんもきっと、泣いてくれるよね。
戦うことは、やめない。
守りたい大事な人がいるから…。

強くなりたい、強くならなきゃ。
今までずっと守ってくれたおとーさんを、今度はあたしが守る。
見守ってて、おかーさん。

あたしは、前へ進むから……。

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【2007/04/03 23:21 】
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手紙
ある日の夕方、借りていたマンガを返すために
あたしは虎ちゃんの家、雅臣寺へ行った。

虎ちゃんは本堂の前に立っていた。
夕暮れに照らされて、ブリーチされた金色の髪がキラキラ綺麗。
手には、白い何かが握られていた。
声をかけようとしたその瞬間、虎ちゃんはそれにマッチで火をつけた。

「ちょっ!虎ちゃん!何してるんだべさ!!」

あわてて駆け寄り奪ってみてみると、手紙だった。
端の焼け焦げたそれに書かれていたのは女性の文字、知らない名前。
虎ちゃんのおかーさんに宛てられたものだった。

「母ちゃんがよ、俺様に読めって。」
「…なんで、読まないの?」
「読む気ねぇから…それ、俺様を捨てた女からだからよ。
 今更なんだっつんだよ、今更…実の親だとかウゼェし!」
「あ…。」

虎ちゃんは幼稚園の頃、孤児院に引き取られてから、雅臣の家にきたらしい。
虐待されて、愛情も知らず、笑わない子だったっておばさんが言ってた。
そんな虎ちゃんが今みたいに育ったのは、雅臣のおじさんとおばさんの
愛情のお陰だってつくづく思うし、感謝してる。
だって今の虎ちゃんが、あたしは大好きだから。

「ガキだからって忘れたわけじゃねーよ…あの地獄の日々。
 だから何書いてあんのか知らねーけど読む気ねぇ!」

声を荒げる虎ちゃん、震える肩。

「あたしが、読んでもいいかい?」
「……別にいいけど。」

興味本位でそう言った訳じゃない。
虎ちゃんのおばさんが、なぜ虎ちゃんにそんな人からの手紙を
読めって言ったのか、真意が知りたくて、あたしが代わりに読もうと思った。

内容は大方想像していた通り。
身寄りがなくなったから、虎ちゃんを引き取りたいっていう
あまりに乱暴で横暴で自分勝手な申し出。
虎ちゃんを捨てた人を憎いと思った。
初めて心から、人を憎んだ。

「虎ちゃん、火、つけなや。」
「え?」
「ほら、早く!」

言われるがまま、虎ちゃんはマッチをすった。
その炎に、あたしが手紙を近づけ、燃やした。
そしてそれは、目に痛い煙を出しながら、空に消えていった。

「これで、共犯でしょや。おばさんには一緒に謝ってあげるからね。」
「里栖…お前。」

困ったような顔をして笑ったかと思うと、虎ちゃんは突然しゃがみこんだ。

「うおおおお!俺様は今、お前を超抱きしめたい!!駄菓子菓子!!
 親父さんとの協定上それは致しかねる!致してしまうと
 俺様ハチの巣にされてしまう!故に里栖!そんな不憫な俺様を
 逆に抱きしめていただきたいーー!!」
「なんの協定だべさ…もう、しょうがないにゃー…今日だけだよ?」

あたしはちっちゃくなった虎ちゃんを、抱きしめて
まるで泣いてる子供をあやすように、背中を撫でた。

「虎ちゃんの'本当の親'は、雅臣のおじさんとおばさんだよ。」
「……おう。」
「親孝行しなや?」
「…………おう。」


悲しみは全部、この空に、もうすぐ世界を照らす黄金の月に
融けて消えてしまえばいい。
そしてお日様が出たら、みんな笑顔に戻れればいい。

ずっとずっと、笑顔でいれたらいい…。

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【2007/03/01 17:16 】
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夕焼け小焼け
「里栖発見!一緒かえろーぜー!」
後ろから飛びついて抱きしめる虎太郎。
いつもならここで「こんなところでいきなり何するんだべさっ!」と
ジタバタ抵抗するはずの里栖だったが……。
「あ、虎ちゃん。」
「おろ、どうかしたか?腹でも痛ぇのか?」
「ううん、なんもだ…一緒に帰ろ。」
「おう。」

二人のの家は近所で、歩いて5分もかからない距離だ。
いつも遅刻ギリギリの虎太郎と登校が一緒になることはなかったが
帰りはこうして、たまに一緒になることがあった。

「ねぇ…虎ちゃん、あのね。」
「んー?」
「……ごめんなさい、やっぱり、なんでもない。」
「ふーん、そっか。」

虎太郎は別に興味が無い訳でも、言葉の先が気にならない訳でもない。
むしろ逆だ。
夕焼けに染まった里栖の寂しげな表情が、気になって仕方がなかった。
けれど虎太郎は、あえて聞かないのだ。
それは、強引に聞き出そうとすれば、『ごめんなさい』と言って
なお黙って、自分ひとりで抱え込んでしまう里栖の性格を、良く知っているからだ。

逆に里栖も、知ってくれているから敢えてそっけなく、それ以上聞かない
虎太郎の優しさや気遣いをよく知っていた。

二人はしばらく黙ったまま、ゆっくり歩いた。
時折強くて冷たい風が吹きぬけて、里栖の柔らかい髪を乱す。
虎太郎はただ、ぼんやり歩を進める里栖がころばないように注意しながら
頭を撫でるフリをして、髪を直してやっていた。

「虎ちゃん、あの歌、唄ってくれんかなぁ…?」
「あの歌って、どれ?俺様、持ち歌多いから!」
「昔、泣いてたあたしの為に作ってくれた、あの歌。」
「でっ!マジすか、ここで?!」
「うん、今、聞きたいんだわ…。」

虎太郎はうーんと空を見上げた後、照れくさそうにしながら
里栖にだけ聞こえるように、その歌を歌い始めた。
それはパンクスの虎太郎が唯一作ったバラードのラブソングで
里栖に聞かせるためだけの歌だった。


普段おちゃらけてばかりの虎太郎だが、歌っているときはまるで別人で
高くもなく、低くもない心地よい声をしていて…。
里栖は、虎太郎の歌声が大好きだった。
しかも自分を元気付けるために、自分のためだけに歌ってくれているのだから
心底嬉しかった。

里栖はその優しい歌声を聴きながら、心が少しずつほぐれていく気がしていた。

「ありがとうね、虎ちゃん。」
「別に、可愛い俺の里栖のためだかんなー。」



虎太郎のまだあどけない笑顔に、やっと里栖も笑顔を返した。




ゆうやけこやけで またあした

あしたは きっと また わらえるから
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【2007/01/21 21:40 】
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